――だから、わたしはあなたを好きになった――……
言って、彼女はひとすじの涙を流した。
涙は滑らかな頬を滑り、地面へと吸い込まれていく。
連日の晴天で枯れきったアスファルトは、いとも簡単にそれを受け入れた。
――何も、言ってくれないの?
涙声で呟く彼女。僕は静かに拳を握り締める。
そして僕はただ真っ直ぐに、彼女を見据えた。
己の現状を、己の運命を、そして抗いようのない鎖を、心の底から憎みながら。
そう、僕はその時生まれて初めて自分のことを呪ったのだ。
僕が、僕が覚醒者になど成っていなければ僕達は、と――。